筆者(行政書士・遠山桂)は、岐阜県行政書士会恵那支部の主催する無料相談会で中津川市役所において市民の皆様の相続問題について応じてきました。
そのご相談の内容で最も多いものは「実家の不動産を相続するが不要だし管理ができない」というものです。

子は、名古屋や東京に出て暮らしており、今さら実家の建物や農地、山林はいらないし、維持管理もできない状況です。
昔なら土地や建物は大事な財産(不動産)でしたが、今は田舎の不動産には財産的な価値は少なく、管理の手間ばかりかかるマイナスの財産(負動産)とも言われます。
そんな実家の不動産を手放すには、以下の5つの方法を検討することになります。
(1)知人に売却・譲渡する
(2)不動産業者を通じて買い手を探す
(3)行政のマッチング制度に登録し引き受け手を探す
(4)相続時に相続放棄の手続をする
(5)相続土地国庫帰属制度により国へ引き渡す
このどれかの方法で不要な不動産を手放すことができればよいのですが、それが無理な場合は相続を受けた相続人が管理をしていくしかありません。
そんな不本意な事態を防ぐために、不動産を手放すための5つの方法について解説します。
(1)知人に売却・譲渡する
問題の不動産を隣人や親族など知人で引き受けてくれる方がいれば、それが最も手堅い解決法になります。
まずは周囲の方々に相談して不動産の譲渡について打診をするとよいでしょう。
(2)不動産業者を通じて買い手を探す
不動産の所在地の不動産業者に売却したい旨を告げて、買い手を探してもらいます。
販売リストへの登録や売買成立の際に手数料が必要な場合があります。
利用価値の高い不動産であれば早期に売買成立する可能性がありますが、販売見込みのない不動産の場合は登録を断られることもあります。
(3)行政のマッチング制度に登録し引き受け手を探す
空き家バンクや農地取引の仲介など、市役所(行政)が行うあっせん制度に登録し、引き受け手を探す方法もあります。
ただし、利用価値が高い不動産であれば引き受け手が見つかることもありますが、そうでない場合は一向に処分ができません。
(4)相続時に相続放棄の手続をする
相続の開始日から3か月以内であれば、家庭裁判所に申し立てを行い、相続放棄の手続を行うことができます。
相続放棄については不動産の一部のみを放棄することは出来ないため、現金も含めた全ての遺産を放棄する必要があります。
全ての遺産を放棄することは現実的ではないため、あまり利用される手続ではありません。
(5)相続土地国庫帰属制度により国へ引き渡す
相続土地国庫帰属制度は、相続又は遺贈によって宅地や農地、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる制度です。
とてもハッピーな手段に思えますが、利用するための要件は意外とシビアです。
【相続土地国庫帰属制度の対象外となる土地】
・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
【審査して不承認になる土地】
・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
以上
相続土地国庫帰属制度を利用する要件は以上のようになかなか厳しいものです。
まず建物があるなら撤去が必要で、境界が不明確な場合は測量や隣地承諾が必要になり、そうした費用は意外とかかります。
また、制度利用のための負担金も20万円以上を見込む必要があります。
以上のように不動産を手放すには手間も費用もかかることが多いです。
特に山奥など交通アクセスの悪い土地は容易に引き受け手が見つかるものではありません。
不要な不動産の相続人となった場合は、これらの方法を検討し、それでもダメだったら引き受けて管理をするしかありません。
相続人が複数いる場合は、負動産を引き受ける相続人に現金の相続を手厚く配分するといった配慮が必要でしょう。
自身が親の立場で、子らに負動産の管理で仲違いさせたくないと考えるなら、古い建物の解体や処分について検討を進めて遺言書を作成しておくという対策が求められます。